2010年10月1日金曜日

毒殺魔の教室

著者: 塔山 郁  出版: 2009年

評価 ★★★★☆

楠本大輝は小学校6年で、命を落とした。毒殺だった。犯人は同じクラスの三ツ矢昭雄。そして、三ツ矢はその数日後に同じ毒で自殺した。
なぜ、このような事件が起きたのか?事件から、数十年後に真相を知るため、調査が開始された。


[レビュー]
第7回『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞受賞作。章ごとに小説の主体が変わり、その人目線での語りから、少しずつ真実が明らかになるという形で話が進んでいく。少し前に話題になった「告白」も同様の手法の小説のため、二番煎じの扱いを受けた。
テンポよく進むストーリーは読み手を飽きさせないパワーがあったが、前後半で主人公が変わりのだが、その意味がなかったように思う。後半は過去の事件に大きく関わる蓬田美和を軸に語られていくが、最初から蓬田美和を主人公としても良かったと思う。また、話自体は面白く、非常に読みやすいのだが、この小説は共感できる人間が一人も登場しないところが残念であった。毒殺される楠本大輝も、美人かつ狡猾な仙石夏美も、主人公の蓬田美和も、大輝の兄の楠本圭吾も魅力的ではない。しかもラストもそれほどすっきりしない。ただ、全体的にはまとまっており、非常に良作であったと思う。

三ツ矢昭雄の自殺前の言動、じゃんけんで後出しして、わざと負け、「負けちゃった。しょうがない。俺が責任取るよ。」。そして自殺の流れは唯一この小説の中で見られた心に残るシーンであった。

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